年金・iDeCo

確定拠出年金(iDeCo)は90歳まで運用可能ですが僕は一時金を選択します

最初に考えたこの記事のタイトルは「確定拠出年金(iDeCo)は90歳まで運用できるって知っていましたか?」でした。が、それだと期待させてからがっかりさせることになり、タイトルで釣らないというポリシーに反するのでやめました。

iDeCoが90歳まで運用可能とありますが、

「何寝ぼけたこと言ってんだ、iDeCoの運用は70歳までしかできねーだろ。」

そう思われても驚きません。僕もiDeCoの運用は70歳になったらできないと思っていました。間違っていました。70歳以降に年金を受け取りながら最長20年間運用できます。

が、この方法で十分得をするのは老齢年金の額が低い人だけです。厚生年金をもらっている人は多分ダメです。

更新情報

2022年5月からiDeCoの受給開始可能期間が5年間延長されることを受け、記事内容を変更しています。

読者のコメント

読者のハニエルさんから次の記事にコメントを頂きました。

次はコメントからの抜粋です。強調は河童の編集です。

ちなみに、iDecoの年金受取は「5年~20年」で、受取開始も、制度上、70歳直前でも可能です。そして最長20年(90歳まで)運用を続ける事も可能です。

90歳まで運用できるなんて聞いたことがなかったので、その情報の出典を尋ねたところ、次の書籍を紹介して頂きました。

早速購入して確認しました。

年金として受け取っている期間も運用できます

iDeCoで積み立てた資産の受け取り方は遅くとも70歳までに決定しなければなりませんでした。これが2022年5月から5年延長され、75歳までに変わります。全額一時金で受け取るなら75歳で運用も終了です。ところが年金で受け取る場合、受け取りが完了するまでの期間も運用できるのです。その場合75歳以降も運用指図者の資格を失いません。そしてここが最大のミソですが、75歳になっても資産はどこかに払い出されるわけではないので、基準価額の上昇に伴い資産の含み益も増えるのです。

もちろんその逆(基準価額の下降によって含み益が減る)も起こりますが、考えてみて下さい、iDeCoに資金を拠出できるのは60歳になるまでで(2022年5月から、条件を満たせば最大65歳になるまでに延長されます)、そこから10から15年いわばガチホしてきました。そこから90歳になるまでの最長20年ホールド+一定口数を取り崩すのです。もう基準価額の変動は気にならないほど大きな含み益になっていることが期待できます。よほど運が悪いとそうなりませんが、その時はあきらめましょう。

大胆な試算

具体的なケースを想定します。スリム先進国株式に60歳になるまで拠出をしました。60歳になった時点の評価額は400万円でした。先進国株式の期待リターンは5%程度あるので70歳になる時には評価額は600万になっていてもおかしくありません。うれしいことに60歳からの10年間は、60歳で400万円を一括投資したのと同じことになるので期待リターンそのままのパフォーマンスが得られます。もちろん、70歳時点の評価額がどうなっているかは多分に運(相場)に左右されます。

70歳で600万円まで育てた資産を一時金で受け取ると一時金は600万円で、あとは税金がどうなるかという計算になります。一般的には一時金が有利とされています。が、僕がこれまで見てきたその計算は、年金受け取り中に資産が増えないのが前提でした。これは間違っていたのです。スリム先進国株式の場合、年率5%で増えることが期待できるのです。(そういう想定で進めます。)

では70歳から10年かけて年金で受け取るとします。基準価額の上昇(=世界経済の成長)の恩恵を最大限に享受するため年末1回の受け取りとします。手数料は運用指図者としての費用が年間792円、給付手数料が440円です。(それより高い場合は金融機関の選択間違えています。)正確な計算は誕生月の影響を受けるのでここではそれを求めないとして、大雑把なイメージとしては次のようになります。(間違っていたらご指摘下さい。)

70歳から10年かけて年金で受け取る場合の年金額試算表

年末に総口数の1/10を受け取ります。その金額と手数料を引かれた残りは1年間ホールドされて基準価額の上昇の恩恵を受けて増えます。リスクを取って先進国株式に投資しているので年率5%が期待値です。そしてまた年末に総口数の1/9を受け取ります。次の年末は1/8です。

そうすると10年間で受け取る総額は789万円になります。70歳で一時金で受け取るより(税金を無視すると)189万円も増えます。

これって、インデックスファンドに投資して老後にガチホしたまま資金を取り崩しているのと全く同じ光景です。でも根本的に異なる点が2つあります。

  • 売却益に課税されません。そもそも、売却益という概念がありません。
  • その代わり取り崩した資産は「雑所得」となり、他の年金と合算して税額が決まります

問題は2番目です。年金見込額が年額192万円の場合、それに62万円(1年目)から97万円(10年目)を加算したのが年金の総額になります。これが「公的年金等の収入金額の合計」です。330万円未満なので110万円を控除した金額が雑所得になります。つまり、困ったことにiDeCoを年金で受け取る場合、毎年受け取る金額分だけ雑所得が増えます。

僕の70歳以降を想像してみる

(節税のため)個人事業は廃業せず、LLPも解体していないと思いますが、ソフトウェア開発の請負はしていない気がします。そうすると、

  • 基礎控除は使えます。多分48万円。
  • 配偶者控除は(妻に収入がないとすると)38万円。
  • 扶養控除はもう子供が対象外の年齢なので使えません。
  • 青色申告特別控除は雑所得には適用できません。
  • 国民健康保険料控除は使えます。
  • 国民年金控除はもうとっくに年金を払える年齢ではないので対象外です。
  • 小規模企業共済等掛金控除は使えますが、もう拠出していないと思います。
  • 経営セーフティ共済は雑所得には適用できません。

という状況だと思うので、48万円+38万円+国民健康保険料は所得から控除できます。国民健康保険料を12万円だとすると98万円が所得控除額です。

  • 1年目の年金総額は254万円。110万円が公的年金等控除額なので課税対象所得は254万円ー110万円ー98万円=46万円。
  • 10年目の年金総額は289万円。110万円が公的年金等控除額なので課税対象所得は289万円ー110万円ー98万円=81万円。
  • 所得税を5%、住民税を10%、国民健康保険料の負担増を9%とすると増えた所得に24%も課税されます。
  • つまり、iDeCoを年金として取り崩した額の58%から73%の24%が税金になります。

一時金でもらう場合

一時金を選択すると「退職所得」になり、課税所得は次の式で計算されます。

課税所得=(資産額ー退職所得控除額)÷2

退職所得控除額は加入期間20年までは年40万円、21年目以降は年70万円ですので、僕の場合は52ヶ月の端数を切り上げで5年×40万円=200万円です。よって課税所得は200万円になります。195万円以下なので所得税率は5%となり住民税10%を加えた課税額は30万円です。よって570万円を手にできます。

やはり僕は退職所得控除を使った方が有利だと思うし、iDeCoを年金で受け取ることで課税所得が増えるのは好みません。

年金で受け取って得する条件

iDeCoを年金で受け取る場合、老齢年金との合計が110万円+48万円(基礎控除)以下なら課税されません。国民年金など老齢年金の額が少ない場合は70歳以降も運用しながら年金として受け取ることで非課税のメリットを活かせる可能性があります。

また、年金でもらいながら課税されずに運用する資産額を見積もり、それ以外を一時金でもらうという方法もあるでしょう。なお、金融機関により年金で受け取れる期間にも異なる制約がありますので注意が必要です。例えば楽天証券は5年から20年の1年刻みですが、SBI証券は5年、10年、15年、20年の4択です。iDeCoには落とし穴が多いです。

iDeCoの制度上の問題

iDeCoは年金制度として設計されました。そのため拠出時は全額所得控除されますが、年金として受け取る時は税制上も「年金」の扱いを受けてしまい、その結果総合課税の対象になります。そして年金の控除額は非常に少ない(110万円+基礎控除など)ので税負担が大きくなります。

一時金でもらう時は退職所得控除が適用されるのですが、これは年金とは次元が違うほど優遇されていて、他の退職金との合算など退職金用の税制の制約もありますが、条件をクリアすれば税負担は非常に少なくてすみます。そのためほとんどの試算では一時金が有利とされます。

また、投資信託を特定口座で購入した場合、売却時の課税は売却益に対してのみ行われます。iDeCoの場合運用益は非課税と言われますが(この表現は間違っています)、年金で受け取ると受取額全体が雑所得になってしまいます。老齢年金と同様の扱いなわけです。

大きな利益を手にできるのはiDeCoを一時金で受け取り、かつ、退職所得控除を最大限に受けられる場合だけだと思います。その場合は税負担を非常に軽く感じ、それ以外だと税負担を大きく感じるのではないでしょうか。

そう考えるとNISA、つみたてNISA、ジュニアNISAは夢のような制度です。拠出時の所得控除はありませんが、後は非課税、利益が出ればまるもうけです。

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