インデックス投資

【全力解説】資金流入から読み取る投資信託の積立設定日

資金流入額の大きい、人気の高い投資信託の場合、資金流入の多くは積立投資によるものだと思われます。それは想像ではなくて、資金流入の様子を観測した結果です。

そして、資金流入の様子から興味深い事実も分かります。

前説

注文日が1日の場合、国内資産にのみ投資する投資信託だとその日に、海外資産に(も)投資するものだと翌営業日に約定します。また、注文日が営業日でない場合は、順延されます。たとえば2021年5月1日が注文日の場合、その日は土曜日で翌週は水曜日までゴールデンウイークの連休でしたから、注文日は木曜日の6日になりました。

また、iDeCoの場合は毎月26日が引き落とし日で、そこから13営業日後が注文日になります。こちらも、営業日のみをカウントします。

投資信託が買われている日を調べる方法

参照するデータは次の2つです。

  • 基準価額の日次データ。
  • 純資産総額の日次データ。

この2つから、営業日ごとの資金流出入額が計算できます。それは買い付け金額ー売却金額であり、売却金額が邪魔ですが、それはどうにもなりません。

この資金流出入額を、カレンダーの1日から31日で累積させます。ただし、ある営業日の資金流出入額がマイナスの場合、それはゼロとして扱います。

次はDCニッセイ外国株式の設定来の資金流入額を、日別に分類したものです。

DCニッセイ外国株式の設定来の資金流入額を、日別に分類したグラフ

DCニッセイ外国株式は確定拠出年金専用です。18日にピークがあるのは、毎月そのあたりが買い付けの約定日になっているためだと思われます。でも、その他の日もゼロではないのは、積立日を自由に選択できるところ(販社)もあるからかも知れません。

次は年別にプロットしたものです。

DCニッセイ外国株式の設定来の資金流入額を、年別にプロットしたグラフ

次は直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移です。iDeCoの約定日(の翌営業日)に赤丸を付けています。

DCニッセイ外国株式の直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移グラフ

直近1年間だと、資金流入のほとんどはiDeCoの買付によるものだと分かります。

人気商品はいつ買われているか

資金流入の様子から、人気商品がいつ買われているか、積立日がいつなのかを推し量ります。

スリム先進国株式

次はスリム先進国株式の集計結果です。

スリム先進国株式の設定来の資金流入額を、日別に分類したグラフ

月初に多く買われています。

次は直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移です。注文日が1日の約定日(の翌営業日)に緑の丸を、iDeCoの約定日(の翌営業日)に赤丸を付けています。「の翌営業日」なのは、純資産総額に反映されるのが約定日の翌営業日だからです。

スリム先進国株式の直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移グラフ

直近1年間だと、資金流入のほとんどは注文日が1日のものだと分かります。iDeCoの買付によるものはそれほど顕著ではないです。

スリム米国株式(S&P500)

次はスリム米国株式(S&P500)の集計結果です。

スリム米国株式(S&P500)の設定来の資金流入額を、日別に分類したグラフ

月初に多く買われています。スリム先進国株式の買われ方にそっくりです。

次は直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移です。

スリム米国株式(S&P500)の直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移グラフ

直近1年間だと、資金流入のほとんどは注文日が1日のものだと分かります。iDeCoの買付によるものはかすかに認識できる程度しかないです。iDeCoでスリム米国株式(S&P500)を買えるのが、SBI証券(セレクトプラン)、松井証券、マネックス証券だけだから、というのも影響しているかも知れません。

また、注文日が1日の資金流入額が急速に増えているのが分かります。次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。

スリム米国株式(S&P500)の設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

ラインの反り返り具合が、資金流入額の増加(=人気の加速)を表しています。

SBI・V・S&P500

次はSBI・V・S&P500の集計結果です。スリム米国株式(S&P500)と大きく違います。

SBI・V・S&P500の設定来の資金流入額を、日別に分類したグラフ

月初に近い方が多いですが、みんな好きな日を積立日にしているようです。

次は直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移です。

SBI・V・S&P500の直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移グラフ

直近1年間だと、注文日が1日のものは多い(特に最近は)ですが、圧倒的ではありません。また、SBI・V・S&P500はiDeCoの取り扱いはないので、赤丸が付いた日の買付に特別な意味はありません。

同じS&P500種指数に連動する人気商品なのに、スリム米国株式(S&P500)とSBI・V・S&P500のこの違いの大きさに驚きます。おそらく、次が関係しているに違いありません。

  • SBI・V・S&P500は楽天証券では買えません。買えるのはSBI証券、auカブコム証券、マネックス証券、SMBC日興証券、岡三オンライン証券、佐賀銀行だけです。現在、SBI・V・S&P500はクレジットカード決済で買えないのです。
  • スリム米国株式(S&P500)はSBI証券でも買えますが、楽天証券で楽天カード決済で買えます。
  • 楽天証券で楽天カード決済で積立をする場合、これまでは、注文日は1日固定でした。

楽天全米株式

次は楽天全米株式の集計結果です。

楽天全米株式の設定来の資金流入額を、日別に分類したグラフ

スリム米国株式(S&P500)にそっくりです。さすが、楽天証券の主力商品だけのことはあります。

次は直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移です。

楽天全米株式の直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移グラフ

直近1年間だと、資金流入のほとんどは注文日が1日のものだと分かります。iDeCoの買付によるものもそこそこ目立ちます。楽天証券のiDeCoで買えるのが有利に作用しているのではないでしょうか。

スリム全世界株式(オール・カントリー)

次はスリム全世界株式(オール・カントリー)の集計結果です。

スリム全世界株式(オール・カントリー)の設定来の資金流入額を、日別に分類したグラフ

月初に多く買われています。スリム米国株式(S&P500)の買われ方にそっくりです。

次は直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移です。

スリム全世界株式(オール・カントリー)の直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移グラフ

直近1年間だと、資金流入のほとんどは注文日が1日のものだと分かります。2020年10月分が1日ずれていますが、これは新興国に休場日があったためだと思われます。

iDeCoの買付によるものはほとんどないようです。オール・カントリーをiDeCoで買えるのが松井証券とマネックス証券だけだというのが大きい気がします。

楽天全世界株式

次は楽天全世界株式の集計結果です。

楽天全世界株式の設定来の資金流入額を、日別に分類したグラフ

楽天全米株式にそっくりです。これだとiDeCoでもそこそこ買われていますね。

次は直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移です。

楽天全世界株式の直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移グラフ

楽天全米株式よりも、iDeCoで買われている比率が大きいです。全世界株式を選択している受益者の属性を想像すると、納得の結果でしょうか。

セゾングローバルバランス

次はセゾングローバルバランスの集計結果です。積立日を自由に選択できない投資信託の代表格です。

セゾングローバルバランスの設定来の資金流入額を、日別に分類したグラフ

ピーク以外はスポット購入だと思います。

次は直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移です。

セゾングローバルバランスの直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移グラフ

唯我独尊ですね。

ひふみ投信とひふみプラスとひふみ年金

次はひふみ投信の集計結果です。レオス・キャピタルワークスでしか買えません。一般販売されているのは「ひふみプラス」です。

ひふみ投信の設定来の資金流入額を、日別に分類したグラフ

ひふみ投信は積立日を自由に選択できないのでしょう。次はひふみプラスです。

ひふみプラスの設定来の資金流入額を、日別に分類したグラフ

本当に好きな日に買っているようです。

次は直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移です。上から順にひふみ投信、ひふみプラス、ひふみ年金です。

ひふみ投信の直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移グラフ

ひふみプラスの直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移グラフ

ひふみプラスは資金流出が目立ちますね。

ひふみ年金の直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移グラフ

ひふみ年金は確定拠出年金専用商品なので、これは当然の結果です。1日だけ、計算がズレたものがありますが、許してください。

野村つみたて外国株投信

次は野村つみたて外国株投信の集計結果です。野村つみたて外国株投信は、積立でしか買うことができない(スポット購入不可)という、追加投資好きの僕は絶対に選択しないタイプです。

ひふみプラスの設定来の資金流入額を、日別に分類したグラフ

楽天証券では、積立日は自由に選択できます。ですから、グラフがこの形状になるということは、自由な日に買えない金融機関で買っている(しかも積立投資のみ)受益者が多いということだと思います。

次は直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移です。

野村つみたて外国株投信の直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移グラフ

iDeCoナビによると、野村つみたて外国株投信をiDeCoで扱っているところはありません。おそらく、1日の注文日は楽天証券によるものではないですかね。(言い切っていいのか?)この資金流入のパターンには、野村つみたて外国株投信ならではの理由があるはずです。

ニッセイ外国株式

次はニッセイ外国株式の集計結果です。

ニッセイ外国株式の設定来の資金流入額を、日別に分類したグラフ

月初が目立ちますが、他の日にも分散されています。年度別に見ると、なるほどとなります。

ニッセイ外国株式の設定来の資金流入額を、日別に分類したグラフ、年度別にプロット

2019年と2020年は月初が飛び抜けています。ニッセイ外国株式が設定された2013年12月から2018年までは、分散していたのです。そして、楽天証券で楽天カード決済による積立が始まったのが、2018年11月だったのです。これは楽天カード決済による積立投資が、注文日が1日の資金流入が増えた理由だと断定して、間違いないでしょう。

次は直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移です。

ニッセイ外国株式の直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移グラフ

注文日が1日のものが目立ちます。iDeCoの買付は明確ではないですね。ニッセイ外国株式をiDeCoで買えるのが、SBI証券(セレクトプラン)だけだからでしょうか。え、セレクトプランって人気ないわけじゃないですよね。

たわら先進国株式

次はたわら先進国株式の集計結果です。

たわら先進国株式の設定来の資金流入額を、日別に分類したグラフ

たわら先進国株式は2015年12月に設定されました。2017年までは買付日は分散されていましたが、2018年からiDeCoによる買付が目立つようになりました。

次は直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移です。

たわら先進国株式の直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移グラフ

赤丸の付いているのがiDeCoによる買付です。月初の買付は目立ちません。2020年12月頭に大人買いした人がいますが、その注文日は1日ではなく、11月末分です。

注文日が1日のものが少なく、iDeCoで多く買われている理由は、おそらくこうです。

  • 特定口座や非課税口座では、たわら先進国株式は人気商品ではない。(特別な理由でもない限り、ニッセイ外国株式かスリム先進国株式を選ぶでしょう。)
  • 楽天証券のiDeCoで選択できる先進国株式インデックスは、事実上、たわら先進国株式しかない。

間違ってたらごめんなさい。

状況証拠が示すこと

楽天証券が2018年12月分から始めた、楽天カード決済による積立投資の人気は高く、投信積立を設定している受益者の70%にもなるそうです。楽天カード決済の注文日は1日固定で、これが如実に現れた結果だと思われます。僕はそれ以外に、スリム米国株式(S&P500)とSBI・V・S&P500の買われ方の違いを説明できません。

また、楽天カード決済による積立投資はポイント付与の観点では大きな負担ですが、利用者数・利用金額の拡大を狙う上では絶大な効果が期待できそうです。

その楽天カード決済による積立投資の注文日が、2021年6月20日以降初めて利用する人は8日に変更になります。この変更により、今後、8日を注文日とした積立投資のトゲが伸びてくるはずです。丸印の色、どうしようかな。

また、2021年8月分からSBI証券でもクレジットカード決済による投信積立が始まります。楽天証券に2年半遅れてやっと対応したわけです。(なお、キャンペーン期間を除くと、SBI証券のポイント付与率は0.5%と楽天証券の半分しかなく、魅力は劣ります。)

これによりSBI・V・S&P500の買われ方が大きく変わると予想しています。どちらもどうなるか、とても楽しみです。

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