SBI証券は積み立て設定の柔軟性が非常に高く、毎営業日積み立てに加えて毎週積み立ても選択できます。楽天証券はつみたてNISAでのみ毎営業日積み立てが選択可能ですが、毎週積み立てには(口座に関わらず)対応していません。
毎営業日積み立てと毎月積み立てのどちらが有利かについては、理屈と実データを用いた検証により、結論が出ています。
考えもなく毎営業日積み立てを選択すると損する可能性が高いです。その結論が導かれた背景が理解できれば、毎週積み立てより毎月(毎月初)積み立ての方が有利となるのは当然なんですが、本当にそうでしょうか。検証しました。反論歓迎です。
シンプルな理屈
投資対象の基準価額が、傾向として、右肩上がりで上昇する場合、早く資金を投入した方が安く買えます。つまり、平均取得価額を下げられるわけです。よって、次のことが期待できます。
- 一括投資の方が、積み立て投資より有利
- 毎月初積み立ての方が、毎営業日積み立てより有利
- 毎月初積み立ての方が、毎週積み立てより有利
この記事では毎週積み立ての効果を検証したかったので、毎週積み立てた場合と、各月の積み立て額を月初に積み立てた場合をシミュレーションすることにしました。実際には毎月積み立ては毎月同額積み立てるものであり、各月の週の数で変わりませんが、それだと投資総額が異なってしまうためあえて毎週積み立てと毎月積み立てで毎月の投資額が同じになるようにしました。
なお、毎週月曜日に約定するものとし、月曜日が休日の週はその週の最初の営業日に約定させています。
期待リターン年率5%の場合
現実にはありえませんが、投資対象の基準価額が期待リターン年率5%で直線的に増える場合です。
この場合、ある月で見た時に基準価額が最安なのは月初なので、毎営業日積み立ては絶対に毎月初積み立てに勝てません。
次はその積み立てシミュレーション結果です。
緑のラインが毎月初積み立ての評価額の推移です。毎月初に買い付けるので階段状になります。赤のラインが毎週積み立てです。より細かい階段状です。
青のラインはリターン差で、毎月初積み立てー毎週積み立てです。毎月末に算出していますので、左端(初月)は空白です。
この場合、リターン差は約0.18%で一定です。リターン差は投資対象の基準価額の変化の仕方で決まるのですが、それが直線的だからです。
期待リターン年率-5%の場合
今度は逆に期待リターン年率マイナス5%で直線的に減る場合です。
この場合、ある月で見た時に基準価額が最安なのは月末なので、毎月初積み立ては絶対に毎週積み立てに勝てません。
次はその積み立てシミュレーション結果です。
当然ですが、逆の結果になりました。でも長期で見ても期待リターンがマイナスなら、そもそもそんなものに投資する気になりませんよね。
現実のインデックスファンドで比較
- 毎週ごとの積立額は5,000円とします。毎月初の積立額はその月の毎週積み立ての拠出額です。
- 毎月末のリターン差を見ます。青のラインがプラス圏内なら毎月初積み立てが有利です。
- 比較期間は2013年年初から2020年9月末です。それ以降に設定されたものは個別に明記します。
- グラフは基準価額の推移、積み立てシミュレーション結果の2つがペアです。基準価額が下落傾向の弱気相場では青のラインはマイナス圏に偏る様子を確認してください。
積み立て投資の結果のリターン差の数値は、赤枠で囲ったところにあります。
eMAXIS先進国株式
7年間で見ると右肩上がりですが、途中弱気相場も株価下落も経験しています。
青のラインはプラス圏を推移しています。
eMAXIS新興国株式
強気相場と弱気相場が交互に現れています。
弱気相場でマイナス圏に落ち込んでいます。
eMAXIS TOPIX
強気相場、軽い弱気相場、強気相場、軽い弱気相場、暴落でした。
弱気相場でマイナス圏に引っぱられる様子が認識できます。
eMAXIS日経225
せっかくなので日経平均も。
TOPIXと変わらない結果です。
eMAXIS先進国リート
最初の2年間は強気相場でしたが、その後ボックス相場が長く続きました。
青のラインはボックス相場でダラダラ下がっています。でもプラス圏にとどまりました。
eMAXIS国内リート
強気相場、ボックス相場、強気相場、暴落と変化に富んでいます。
青のラインは理屈通りの動きをしています。
eMAXISバランス(8資産均等型)
基準価額の推移を見ればおおむね予想が付きますね。
毎月初積み立てが有利です。
楽天全世界株式
2017年10月からの比較です。良いサンプルに見えますね。
青のラインは基準価額と同様に乱高下しています。でも毎月初積み立てが有利です。
三井住友DC外国株式インデックスL
2003年2月からです。リーマンショックを含む17年間です。
リーマンショックではマイナス圏に落ち込みました。その後の強気相場ではプラス圏を推移しています。
SPYトータルリターン
S&P500種指数に連動する、長い歴史を誇るSPY(米国籍ETF)のトータルリターンです。1993年2月からです。27年間の比較です。結果を想像してみて下さい。
暴落時はマイナス圏に引っ張られますが、強気相場での上昇力が強いので差を広げられます。
2020年のつみたてNISAでは
次は2020年1月6日から2020年9月30日を対象期間としたシミュレーション結果です。右端の列は「毎月初ー毎営業日」です。
利益率の差が大きい順(毎月初積み立てがより有利な順)に並べています。
2020年はこれまでのところ、毎月初積み立ての方が毎週積み立てより有利でした。毎営業日積み立てほど不利ではありませんが、わざわざ毎週積み立てを選択する意味はないでしょう。
結論:毎月初積み立てがおすすめです
理屈が理解できれば、数学的に次のことが期待できます。
- 強気相場なら毎月初積み立てが有利。
- 弱気相場なら毎週積み立てが有利。
どちらか一方のみ選ぶとしたら、強気相場の方が多いと期待されるものにしか投資しないでしょうから、毎月初積み立てが有利になります。
毎月初積み立てと毎週積み立てではそれなりの差があります。信託報酬の0.1%の違いを大きいと思う人には十分大きな差です。長期投資でも0%に収束したりしません。逆に下降局面、停滞期は毎週積み立てが有利です。